• 40代・50代、シニア世代のための川崎市麻生区在住の独立系FP

令和4年度の税制改正により、令和5年(2023年)分の確定申告(住民税の課税年度は令和6年度)以降は、所得税と住民税で異なる課税方式(申告不要制度、総合課税、申告分離課税)の選択ができなくなりました

令和4年度は源泉徴収ありの特定口座で上場株式の配当等を受取った場合、所得税は総合課税を選択して配当控除(※1)を利用して所得税の節税を図り、住民税では申告不要制度を選択することによって社会保険料(国民健康保険税や後期高齢者医療制度の保険料など)の増加などを回避することができましたが、今後は所得税で総合課税方式を選択して確定申告した場合は、住民税でも総合課税を選択しなければならなくなりました。

このため所得税で上場株式等の配当所得等や上場株式等の譲渡所得等を確定申告すると、これらの所得は住民税でも合計所得金額(※2)や総所得金額等(※3)に算入されることになります。
これによって、扶養控除や配偶者控除などの適用、非課税判定及び国民健康保険料、後期高齢者医療制度の保険料、介護保険料などの算定に影響が出たり、その他の行政サービスにも影響が出たりする場合があります

特に、繰越控除(※4)の適用を受けるために確定申告をする場合、繰り越し済みの譲渡損失と相殺すれば株取引で得た利益にかかる税金は安くなるかもしれませんが、それ以上に社会保険料が上がり家計の負担が重くなる可能性があるので注意しましょう。

(※1)「配当控除」については以下のコラムを参考
 参考:配当所得を受け取っていると納め過ぎた税金を取り戻すことができるかもしれません

(※2)合計所得金額
 事業所得、給与所得、雑所得(公的年金等に係る所得など)、配当所得、不動産所得などの所得金額を合計した金額(純損失または雑損失等の繰越控除を適用するの金額)のこと

<合計所得金額を用いて判定するもの>
均等割の非課税限度額
・障がい者、未成年者、寡婦、ひとり親の非課税限度額
扶養控除、配偶者特別控除の所得判定
・配偶者特別控除の所得1,000万円超の判定
・寡婦、ひとり親控除の所得要件(500万円以下)の判定
65歳以上の介護保険料の段階判定
75歳以上の後期高齢者医療保険料の基礎控除額

(※3)総所得金額等
 合計所得金額から、純損失または雑損失等の繰越控除を適用した後のすべての合計所得のこと

<総所得金額等を用いて判定するもの>
所得割の非課税限度額
・雑損控除
・医療費控除
・寄付金控除

(※4)繰越控除
 損益通算をしても損失額が残る場合に、その損失を最大3年間繰り越せて、翌年以降の上場株式等の譲渡益や利子・配当所得から控除できる制度